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史記 「四面楚歌」 現代語訳

1月 23, 2014 by kanbunjuku // コメントは受け付けていません。



訳:蓬田(よもぎた)修一

<漢文>

史記 四面楚歌

項王軍壁垓下。
兵少食尽。
漢軍及諸侯兵、囲之数重。
夜聞漢軍四面皆楚歌、
項王乃大驚曰、
「漢皆已得楚乎。
是何楚人之多也。」
項王則夜起飲帳中。
有美人、名虞。
常幸従。
駿馬、名騅。
常騎之。
於是項王乃悲歌忼慨、自為詩曰、

力抜山兮気蓋世 時不利兮騅不逝
騅不逝兮可奈何 虞兮虞兮奈若何

歌数闋、美人和之。
項王泣数行下。
左右皆泣、莫能仰視。
(項羽本紀)

<書き下し>

四面楚歌

項王の軍垓下に壁す。
兵少なく食尽く。
漢軍及び諸侯の兵、之を囲むこと数重なり。
夜漢軍の四面皆楚歌するを聞き、
項王乃(すなは)ち大いに驚きて曰はく、
「漢皆已(すで)に楚を得たるか。
是(こ)れ何お楚人の多きや。」と。
項王則(すなは)ち夜起(た)ちて帳中に飲す。
美人有り、名は虞(ぐ)。
常に幸せられて従ふ。
駿馬(しゆんめ)あり、名は騅(すい)。
常に之に騎す。
是(ここ)に於(お)いて項王乃ち悲歌忼慨(かうがい)し、自ら詩を為(つく)りて曰はく、

力は山を抜き気は世を蓋(おほ)ふ 時利あらず騅逝かず
騅逝かざる奈何(いかん)すべき 虞や虞や若(なんぢ)を奈何せん、と。

歌ふこと数闋(すうけつ)、美人之に和す。
項王泣(なみだ)数行下る。
左右皆泣き、能く仰ぎ視(み)るもの莫(な)し。

<現代語訳>

項王軍は垓下の城壁の中に立てこもった。
兵の数は少く食料も尽きた。
漢軍と諸侯の兵は、これを幾重にも取り囲んだ。
夜、周りを取り囲んだ漢軍が全員で楚の地方の民謡を歌うのを聞いた。
項王は(思いがけないことで)たいへん驚いてこう言った。
「漢はことごとくすでに楚を得てしまったのか。何と楚の人間が多いことだ。」
項王はそこで夜中(にも関わらず)起きあがり、陣の帳の中で宴を張った。
虞という名前の美人がいた。
常に項王に寵愛されつき従がっていた。
騅という名の駿馬があった。
常に項王はこの馬に乗った。
そこで項王は悲しげに歌い、憤り嘆いて、自ら詩を作った。

我が力は山をも引き抜き、我が気はこの世をも覆う
時の運は我に利なく、駿馬騅も疲れ果て走れない
騅が走らない、どうしたらよいのか
虞よ虞よ、汝をどうしたらよいのか

項王は繰り返し歌い、虞もともに歌った。
項王ははらはらと涙を流した。
左右の者たちも皆泣き、誰も仰ぎ見ることができなかった。





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