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故事・小話 「孟母断機」 現代語訳

1月 28, 2014 by kanbunjuku // コメントは受け付けていません。

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訳:蓬田(よもぎた)修一

<漢文>

孟母断機

孟子之少也、既学而帰、孟母方織。
問曰、
「学何所至矣。」
孟子曰、
「自若也。」
孟母以刀断其織。
孟子懼而問其故。
孟母曰、
「子之廃学、若吾断斯織也。
夫君子学以立名、問則広知。
是以居則安寧、動則遠害。
今而廃之、是不免於廝役、而無以離於禍患也。
何以異於織績而食、中道廃而不為。
寧能衣其夫・子、而長不乏糧食哉。
女則廃其所食、男則堕於脩徳、不為窃盗、則為虜役矣。」

孟子懼、旦夕勤学不息。
師事子思、遂成天下之名儒。
(列女伝)

<書き下し>

孟母断機

孟子の少(わか)きとき、既に学びて帰るに、孟母方(まさ)に織る。
問ひて曰はく、
「学何(いづ)れに至る所ぞ。」と。
孟子曰はく、
「自若たり」と。
孟母刀(たう)を以(もつ)て其(そ)の織を断つ。
孟子懼(おそ)れて其の故を問ふ。
孟母曰はく、
「子の学を廃するは、吾(われ)の斯(こ)の織を断つが若(ごと)きなり。
夫(そ)れ君子は学びて以て名を立て、問ひて則(すなは)ち知を広む。
是(ここ)を以て居(を)れば則ち安寧にして、動けば則ち害に遠ざかる。
今にして之を廃するは、是(こ)れ廝役(しえき)を免れずして、以て禍患より離るる無きなり。
何を以て織績(しょくせき)して食するに、中道にして廃して為(な)さざるに異ならんや。
寧(いづ)くんぞ能(よ)く其の夫(ふ)・子(し)に衣(き)せて、長く糧食に乏(とぼ)しからざらしめんや。
女則ち其の食する所を廃し、男則ち徳を脩(をさ)むるを堕(おこた)れば、窃盗を為さずんば、則ち虜役と為らん。」と。

孟子懼れて、旦夕(たんせき)学に勤めて息(や)まず。
子思(しし)に師事し、遂(つひ)に天下の名儒と成れり。

<現代語訳>

孟母断機

孟子が若い頃、学問を学び終えて家に帰ったとき、彼の母親はちょうど機織りをしていた。
(母親が)尋ねた。
「学問はどこまで進んだのか。」と。
孟子は「以前から進んでおりません。」と答えた。
(すると)母親は刃物で織物を切ってしまった。
孟子は驚いてその訳を尋ねた。
母親は次のように言った。
「あなたが学問を止めてしまうのは、私がこの織物を断つようなものです。
そもそも君子というのは、学んで名を立て、問いただして知識を広めるものです。
こうすることで、仕官せずに家にいるときは安らかで、仕官して活動するときは災難から遠ざかる。
今、学問を止めてしまうと、召使いになることを免れず、災いから遠ざかることもありません。
どうして、布を織ったり糸を紡いだりして生計を立てるのに、途中で止めて完成させないことがあるでしょうか。
どうして、夫や子どもに服を着せ、いつまでも食料を乏しくさせないことができるでしょうか。
女が生計を立てること止め、男が徳を修めることを怠れば、盗みをしないのでなければ、召使いとなってなってしまいます。」

(それを聞くと)孟子は恐れ慎んで、朝も夜も学問に励み、休むことがなかった。
子思先生に師事し、遂には天下の名高い儒者となったのである。





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