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日本漢文 「所争不在米塩」 現代語訳 

7月 21, 2014 by kanbunjuku // コメントは受け付けていません。

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訳:蓬田(よもぎた)修一

<現代語訳>

争う所は米塩に在らず
頼山陽

信玄の国(=甲斐の国)は、海に面していない。
塩を東海地方の諸国から買い入れていた。
北条氏真(うじざね)は、北条氏康(うじやす)と謀り、密かに塩を他国に出さないようにした。
甲斐(かい)の国は大変困った。
謙信はこのことを聞いて、手紙を信玄に送ってこう伝えた。
「聞くところによると、氏康と氏真とは、貴君を塩のことで苦しませているという。
(これは)勇気もなく義理も欠いた行為である。
私は貴公と争ってはいるが、争っているのは弓矢のこと(=軍事のこと)であって、米や塩のことではない。
どうか、今からは塩を私の国から調達してほしい。
量の多い少ないは貴公の言いつけしだいである」
そこで商人に命じて、(塩の)値段を適正にして信玄の国に与えたのであった。
(日本外史)

<書き下し>

争ふ所は米塩に在らず
頼山陽

信玄の国は、海に浜(ひん)せず。
塩を東海に仰ぐ。
氏真(うぢざね)、北条氏康(ほうでううぢやす)と謀(はか)りて、陰(ひそ)かに其の塩を閉づ。
甲斐(かひ)大いに困(くる)しむ。
謙信之(これ)を聞き、書を信玄に寄せて曰はく、
「聞く、氏康・氏真、君を困(くる)しむるに塩を以てすと。
不勇不義なり。
我公と争へども、争う所は弓箭(きゆうせん)に在りて、米塩に在らず。
請ふ今自(よ)り以往、塩を我が国に取れ。
多寡(たか)は唯(た)だ命のみ」と。
乃(すなわ)ち賈人(こじん)に命じ、値(あたひ)を平(たひらか)にして之(これ)に給せしむ。
(日本外史)

<漢文>

所争不在米塩
頼山陽

信玄国不浜海。
仰塩於東海。
氏真与北條氏康謀。
陰閉其塩。
甲斐大困。
謙信聞之。
寄書信玄曰。
聞氏康氏真困君以塩。
不勇不義。
我与公爭、所爭在弓箭、不在米塩。
請自今以往。
取塩於我国。
多寡唯命。
乃命賈人平價値給之。
(日本外史)



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